家族、ころころ。

〜転がって、丸まって、そうしてゆっくり生きていく〜

もう一人の父親に出会った時、少女は彼のうすら頭にスターを散らばせた。

こんにちは、きーです。
先日、駅まで全力疾走を試みたところ、見事前のめりで転びました。ずさーーーーっと。
予定には間に合ったのですが、柔らかい素材でできた紺のパンツが破けていました、左膝血だらけで恥ずかしかったっ///
怪我をしたらケアリーヴですね。
 
今回は、私が「もう一人の父親」に初めて会った時の話をしようと思います。 10歳の頃、小学4年生です。
もう一人の父親について知った時の話についてはこちら。
 
それではお話させていただきます。
母から、「お父さんに会ってみたい?」と聞かれ、正直のところ、もう一人の父親に強い好奇心はなく、すごく会いたいとも会いたくないとも思わなかった。ただ、お父さんは会いたいって言っているんだけど...と伝えられると、会いたがっている人を拒むのもなんだか気の毒だし、会ってもいいですよ...?というような反応。一応、生きているうちに一度は会ってみましょう、と。
 
そして、当日。
私は母とお父さんと3人で夕方から夕食を食べる約束をした。この時点では、お父さんがどんな生活をしているのかさえ知らない。
元々持っている人見知り具合と、よくわからんけどもう一人の父親と会うという状況に緊張をしながらも、母と待っていた。
すると、前から母と同い年ぐらいの男性が近づいてくる。
超普通の人。10歳の頃の私からみると、かっこいいとは思わないが、同世代の中だったら良い方ではあったのかなーと思った。こんにちは、と優しく微笑む男性をみて、少しホッとした。クセが強くなさそうでよかったー、と。
出会ってはじめに、夜ご飯の時間まで少し時間があるから、と3人でゲームセンターに入った。当時の私はプリント倶楽部、通称プリクラが大好きで、母・弟と出かける度によく撮っていた。
3人で撮っている時、お父さんが後ろから私にゆるくハグをする形で撮ってきた時も、内心びっくりはしたが、不快感を抱くことは特になかった。お、おぉ...ってな感じに。ただ、それは10歳の少女だったからであって、20歳である現在にもし初対面で「お父さん」と名乗る人に、感動のハグではなく、不意打ちに後ろからハグをされたら確実に不快感を覚えるだろうとは思ってしまう。初対面なのに気安くスキンシップしないでくれ、と。つまり、「お父さん」という肩書きは持っているのかもしれないが、私の記憶にない時点で親子間の信頼関係は結ばれていないわけであって、私の中ではあくまでも「初対面の親戚のおじさん」と同等の認識であるのだ。
もし、様々な理由により、年頃の娘さんとの初対面を控えている男性がいらっしゃるのならば、まさかそんなことする人はいないのではないかと思うが、そして私の勝手なお節介ではあるが、ぜひ注意していただければ嬉しい。「初対面での不意打ちの後ろハグは、きっと、おそらく、嫌がられる」ということを。
そんなこんなで、落書きタイムに入ったわけだが、小学4年生の落書きは、センスがない(私の場合)。むやみやたらとハートを書きすぎたりする。
この時もそうだった。
当時、キラキラしたスタンプがお気に入りだった私は、輝くスターのスタンプを天の川のごとくシャラララ〜と散りばめた。何も考えずに、お父さんの頭部に。
「あっ、ちょっと、きーちゃん、それは... 」と後ろで戸惑うお父さんを横目に、母はゲラゲラ笑っていた。なんで笑っているのか分からなかったが、その時私は初めて気付いたのだ、お父さんの前頭骨を覆う皮膚が見えすぎているということに。お父さんは、年齢の割にはうすら頭だったのだ。そのあとの記憶は忘れてしまったが、輝くスターのスタンプを多用したかった私は、大丈夫だよ!と子供の無邪気さを盾に強行突破したような気がする。決して、悪意はないのだ。流石の私もそんなにも大人をナメた子どもではなかったはず。そんなこんなで、初対面のお父さんに花嫁さんのベールのごとくスターを散りばめた私は、夕食に向かった。
お店は、様々なお豆腐を使用した割烹料理屋だったのだが、当時の私は子供舌だったために、お豆腐が苦手で卵豆腐しか食べることができなかった。
「なんでよりによって唯一苦手な豆腐を存分に扱う豆腐専門店にするかな!?」と思いながらも食べた。むしろ豆腐が大好きになった今、連れて行って欲しいくらいだ。
 
そして、悲しいことに、この記憶しかない。何を話したのか、全然覚えていないのだ。
私が2歳の時にお父さんと母は離婚していたこと。
お父さんも再婚をし、新しい家庭を築いていること。
ずっと親戚だと思っていた旬くんが血の繋がったお兄ちゃんだということ。
このような話を「お父さん、今朝パンケーキ食べたんだけどさ〜」と話す時のようなトーンで聞いた気がする。
 
今思い出してみても、本当に切ないことに、うすら頭シャラララ事件と、なぜよりによって豆腐専門店なんだ!と思った記憶しかないのだ。でもきっと、記憶にないということは、良くも悪くも感情の揺さぶりがなかったということだから、穏やかな時間を過ごしたのかな、と思う。
ただ一つ言えることは、たった一回会っただけでは「お父さん」という認識は生まれなかったということである。優しいおじさんと説明した方が近い。
 
こうして、お父さんと私の初対面は幕を閉じた。
この後も、私はお父さんと交流を深めることとなる。
 
次回は、「親戚だと思っていた謎の高身長塩顔雰囲気イケメンが自分のお兄ちゃんだと知った時の話」について書きたいと思います。私は危うく、血の繋がった兄に恋をするところだったのです。読んでいただき、ありがとうございました^^